Vitra(ヴィトラ)とは|vanilla
Vitra(ヴィトラ)とは
Vitra(ヴィトラ)とは、1950年にスイスのヴァイルアムラインに創業した家具メーカーです。創業者はウィリー・フェルバウムとエリカ・フェルバウムの2人。小さな家具什器のメーカーとして始まったヴィトラは、今では様々なデザイナーと協業しデザインを生み出す世界的なリーディングカンパニーとして知られています。
ミッドセンチュリーのど真ん中に誕生し、半世紀以上の歴史を持つ老舗のヴィトラですが、ホーム・オフィス・公共施設など多岐に渡る文化活動は単なる家具ブランドという領域を超えた、まさに一つのプロジェクト。ヴィトラはデザインを通して、「私たちの日々の生活をより豊かなものにすること」を目標に、今この瞬間もその活動を広げています。
デザインカンパニーの誕生
Vitra(ヴィトラ)の誕生のきっかけになったのは1934年に店舗向けの什器メーカーである「Grater」を買収したことが始まりです。創業者はウィリー・フェルバウムとその妻であるエリカ・フェルバウムの2人で、1950年にVitraというブランドが誕生しました。
この「Vitra」のブランド名ですが、元々取扱のあった店舗什器(ショーケース)が由来と言われており、フランス語でショーケースの意味をもつ「Vitrine(ヴィトリヌ)」から名付けられました。
Vitraが取り扱う時代を超えたデザインは、Vitraという大きなショーケースに並べられたコレクションなのかもしれません。
イームズとの出会い
Vitraといえばデザイナーズインテリアを多く取り揃えています。毎日使う椅子やテーブルはもちろん、日々の生活が楽しくなるようなデザインフルなアイテムが豊富ですが、Vitraとデザイナーズインテリアが繋がる1つのきっかけになったのがチャールズ&レイ・イームズです。
Charles&Ray Eames(チャールズ&レイ・イームズ)
「Vitraのデザイン」でも詳しくご紹介していますが、1953年にVitraが視察旅行先のニューヨークで、当時デザインされてまもないイームズのDCW(Dining Chair Woodlegs)との出会いがありました。その後1957年にハーマンミラー製品のヨーロッパでの製造販売のライセンスを獲得し今に至ります。
※日本国内のプライウッドチェアはハーマンミラー製となります。
イームズのプライウッドチェア
プライウッドチェアはDCWの他にDCWのラウンジ仕様のLCW、レッグ部分がメタル素材でできた、DCMやLCMなどがあり、あの名作イームズラウンジチェアのシェル部分もプライウッドで作られています。プライウッドのルーツは戦時中に製造されたレッグスプリント(木製の添え木)がきっかけ。戦争という悲しい背景のもと生まれたレッグスプリントですが、それがプライウッドチェアの原点となり、世界中のデザイナーにも大きな影響を与えています。日本でも柳宗理がLCWをルーツにバタフライスツールをデザインしたと言われています。
vitra製のイームズアイテム
また、日本国内ではイームズデザインは主にハーマンミラー製が流通していますが、Vitraでしか製造・復刻をしていないデザインも多く、イームズハウスバードやプライウッドモビール、イームズエレファントなどはVitra製となります。
Vitra最初の自社製品
「Panton(パントン)」
Vitraの豊富なデザインの中でも一際目立つ椅子がパントンチェアです。インテリアに詳しくない人でも、このデザインは見たことがあるはず。曲線しかないオーガニックで柔らかいデザインは一度見たら記憶に刻まれます。
パントンチェアはVitraがデザイナーと協業して開発に取り組んだ初めての自社製品。デザイナーである、ヴァーナー・パントンの構想から長い月日が経ち、1967年に誕生しました。
Verner Panton(ヴァーナー・パントン)
当時はイームズのDSRでもプラスチックが使われていましたが、DSRではそのシェル部分のみでした。一方でパントンチェアは背もたれから座面、脚まで一体成型で作られています。まるで浮いたような座り心地が楽しめるカンチレバー(片持ち構造)で、世界初めての一体成型プラスチックチェアとして、ミッドセンチュリーのアイコンの1つになっています。
イームズやパントンなど一度は目にしたことがあるデザインですが、それらの時代を超えて愛される名作デザインだけでなく、現代を生きる最新のデザインまでを楽しむことができるのがVitraです。詳細は「Vitraのデザイン」で詳しくご紹介しています。
パントンファミリー
プロジェクトVitraとは
イームズとの出会いに始まり初めての自社製品パントンチェアの誕生など、小さな家具什器メーカーだったVitraは改めて家具メーカーとしての地位を確立していきます。ですが、Vitraは単なる家具の製造販売だけでその活動は終わりません。
Vitraの活動はデザインを通して日々の暮らしを豊かにするという目標を掲げています。家具の製造はその目標を達成するための1つの手段でしかなく、製品開発やインテリアコンセプト、建築やそれらを伝えるコミュニケーションなど活動は多岐にわたります。
この文化的活動とも言えるプロジェクトVitraに最も影響を与えたのがチャールズ・イームズです。
イームズは「デザインとは問題を解決するためにある」という考えのもと、過剰な表現や装飾へ警鐘を鳴らしました。
それは今現在のプロジェクトVitraへも影響を与え続けており、創造的な技術と独自の世界観を持ったデザイナーとの協業に繋がっています。クリエイティブな彼らから生み出される新しい製品やデザインコンセプトは、奇抜さ先鋭的さなどの見た目のデザイン以上に強いメッセージが込められています。
逆境を乗り越え生まれた
Vitra Campus
多岐に渡るプロジェクトVitraの活動ですが、その拠点となるのがVitra Campus(ヴィトラキャンパス)です。ヴィトラキャンパスにはVitraのインテリアアイテムで彩られた世界的な建築が並び、Vitra Design Museum(ヴィトラデザインミュージアム)やVitra Haus(ヴィトラハウス)、Vitra Schaudepot(ヴィトラショウデポ)など、プロジェクトVitraの活動そのものを体感することができます。
Vitra Design Museum(ヴィトラデザインミュージアム)
Vitra Haus(ヴィトラハウス)
Vitra Schaudepot(ヴィトラショウデポ)
これらはデザインを手にする人たちへ楽しさや豊かさを教えてくれるとともに、新しいデザインを生み出す人たちへ大きなインスピレーションを与える場所でもあります。ヴィトラキャンパスを構成する魅力的な施設については「Vitraキャンパス」で詳しくご紹介しています。
デザインをより身近に
Vitraでは「コラージュ」という考え方があります。このコラージュという言葉は、元は絵画で使われる技法の1つでフランス語で糊付けという意味をもちますがVitraではシンプルにその”組合せ”として捉えています。
1つの空間は1つのインテリアだけでなく、インテリアの組合せによって作られていきます。
異なる素材はもちろん、使い古したヴィンテージと新しく作られたもの。高いものと低いもの。クラシックとコンテンポラリー。それらの組合せは一つの概念に囚われることなく、その人の個性として表現されます。
2004年にはホームユースアイテムをコレクションとして発表し、時代を超えた名作たちがより身近に楽しめるようになりました。
また、2013年からArtek (アルテック)とパートナーシップを結んだことでさらに取り扱うデザインの幅が広がっています。現在では、ホーム向けだけでなく、オフィス空間や公共施設など幅広い領域でデザインの価値を伝えています。