世界に認められた蝶
バタフライスツールは1956年に柳宗理によって発表され、誕生から半世紀以上経つ今でも多くの人々を魅了し続けています。構造自体は同じ形の成形合板を2枚つなぎ合わせたシンプルなものですが、人工物でありながら自然の物のように見える理由は、天童木工による高い技術によるもの。左右対称の板が支え合う様から、結婚祝いに選ばれる方も多いようです。
このスツールは、蝶が羽を広げたようなフォルムが名前の由来。日本特有のセンスによる美しさから、パリのルーブル美術館に収蔵され、海外でも高い評価を得ています。
ただ綺麗と言いたい
本来、スツールは「座る」という目的がありますが、このプロダクトに限ってはそうとも言えないようです。
ずっと眺めていたくなる美しさ、綺麗さ。例えば好きな絵画、好きな動物、好きな人・・・。
時にはリボンのように、またある時は花びらのように、見るたび角度や置く場所によって表情を変える。
美人は三日で飽きるなんてとんでもない、いつまでも傍にいてほしい美しさがこのスツールには存在します。
ローズorメープル
天童木工のバタフライスツールは、2種類の木種から選べますがこれがまた一つ悩みの種に。ローズウッドとメープルどちらも美しい木目で捨てがたい。許されるなら2つ揃えたい。そう思ってしまう人は多いはず。手持ちのインテリアに合わせてもよし、完成されたバタフライスツールという存在は単独でも絵になります。バタフライスツールの「ローズorメープル」はマスターピースが故の贅沢な悩みです。
使われるための美しい形
日本のプロダクトということもあり、和の空間、小物との相性は抜群。畳の直線の中にバタフライスツールの曲線がよく映えます。
バタフライスツールは軽く持ち運びがしやすいので使う場所を選びません。例えば玄関で靴を脱ぎ履きする際の腰掛け
やバッグの置き場にしたり、ソファに座った時のオットマン、本やトレーなどを置いてサイドテーブルがわりにしたりと、
様々な場所・用途でお使いいただけます。
ただ美しいだけではなく持ち主の日常に寄り添う、柳宗理の「使われるための美しい形」という理念を体現した家具と
言えるでしょう。
美しさの成熟
美しき蝶の美しきエイジング。メープルは日に日に色味が飴色のように濃くなることで熟成した美しさに、ローズウッドは次第に色味が抜け木目がわかるようになることで優しい美しさに。10年後の自分のライフスタイルをイメージしながら選んでみてください。
※メープル 左:約17年使用/右:新品
※ローズウッド 左:約15年使用/右:新品
デザイナー:柳宗理
1915年東京生まれ。
戦後間もなくデザインの研究に着手し、1953年財団法人柳工業デザイン研究会を設立。家具やキッチンツールなどの生活用品から大型公共構造物まで手がけ、東京・札幌オリンピックのトーチのデザインも行った20世紀日本を代表するインダストリアルデザイナー。
デザイン活動のかたわら、金沢美術工芸大学など多くの学校で長年教鞭を執り、1977年からは約30年にわたって日本民藝館長も務めました。
1981年には紫綬褒章、2002年には文化功労者として顕彰。
2011年に96歳で他界するまで、現代日本人の生活に寄り添う、数多くのプロダクトを生み出し続けました。
デザイナーとメーカーを繋いだ成形合板という技術
バタフライスツールの歴史は、プロダクトデザイナー柳宗理氏の手遊びからはじまります。紙を切ったり、折ったり、曲げたりしているうちに、ある形状が椅子になるのではないかと思ったことが誕生のきっかけです。
手遊びから生まれた形を実現するために、注目したのが成形合板技術でした。
当時の日本ではほとんど知られていない技術でしたが、アメリカのデザイナー、チャールズ&レイ・イームズがデザインした、足をケガした兵士のための添え木「レッグ・スプリント」や椅子「LCW」を通じて、成形合板の存在を知っていた柳氏は、形の実現のため成形合板技術に注目しました。
東北で高周波による成形合板技術の開発が進んでいることを知った柳氏は、仙台にあった産業工芸試験所の門をたたきます。そこで出会った技師の乾三郎と、国内でいち早く成形合板技術を取り入れていた天童木工と共に開発をすすめ、バタフライスツールが完成しました。
パーツは合板、ボルト、真鍮ステーだけ
バタフライスツールの部材は2枚の成形合板と2本のボルト、真鍮のステーのみ。たったそれだけのシンプルな構造であの美しいフォルムが成立していると思うと、改めて考え抜かれたデザインなんだと感じます。
カラーバリエーション
ローズウッド
メープル