ジャン・プルーヴェの特別な1脚
フランスを代表するデザイナー(建築家・建設家)ジャン・プルーヴェ。
その彼がデザインした家具で最も有名と言っても過言ではないスタンダードチェア。このスタンダードチェアにかつて全て木素材で作られたモデルが存在したことはご存知でしょうか。
名前は「シェーズ トゥ ボワ」。英語で言うところの「オールウッドチェア」。
このジャン・プルーヴェ作品の中で唯一、素材が全て木で作られた特別な1脚が2020年の秋、復刻となりました。
オールウッドのスタンダードチェア
スタンダードチェアの歴史は1934年に原型chaise No.4が誕生したところから始まり、その後1950年にメトロポール No.305という椅子を製作します。これがvitra社が現在製作しているスタンダードチェアのオリジナルです。
そしてこの間の1941年、第二次世界大戦中は金属が満足に使えない状況に陥りますが、プルーヴェはフレームを木に置き換えてシェーズ トゥ ボワを製作します。
そして今回復刻されたモデルは1941年のネジを使わないデザインを忠実に再現。大きさや座面の高さは現代の暮らしに合わせて調節され、カラーも当時個別の要望に応えて製作されたダークステイン仕上げをバリエーションに加え、ナチュラルオークとダークオークの2色で展開されます。
スタンダードチェアとの比較
シェーズトゥボワは座面にビスが存在せず、前桟が前から見える位置に設定されています。公式のスペック表ではスタンダードチェアの方が0.5cm座面が高く表記されていますが、実際にはシェーズ トゥ ボワの方が高く感じます。おそらくvitraでは最も低い箇所、もしくは尾てい骨が当たる位置で採寸をされているからでしょうが、実際に測ってみると最も高い場所(座面前方部)ではスタンダードチェアが47.5cm、シェーズ トゥ ボワが48.5cmになりました。
プルーヴェデザイン特徴の後脚。荷重が大きくかかる後脚には前脚よりも太い構造を持た背てあります。ちなみにこれは椅子に大きく寄りかかって後脚だけ使って座るというプルーヴェ自身の癖も反映されていると言われています。
座面の奥行きはシェーズ トゥ ボワがやや短くなっています。
真後から見るとわかりやすいのが脚。スタンダードチェアとは異なり、やや下方に開いています。この脚の角度と背もたれの両サイドの角度が揃っており、いわゆるAラインに仕上げられていることがわかります。